認知症を患ったひとの目

認知症。以前は痴ほうといっていた。

学生のころ、うちのおばあさんが痴ほうだった。家族なのに、

あんたたちはだれだ、というあの目は、いまだに忘れられない。


数十年経ち、近年になって、よく老人施設に面談に行っていたときの

経験談だが、

面談する本人ではなく同じフロアの知らないおばさんが、

「あんたは誰だ、出ていけ」とよろよろと手をあげて向かってくる。

むかし経験した、うちのおばあさんのあの眼だった。


日にもよるが、自分が認知していない人に対しては、怪しいひと、

悪いひとがいる、と思うことがあるのだろう。

そのときに向けられる視線は、

情の欠けらもない冷たい目をしていて、こちらから言葉をかけても

むなしい言葉だけを返されてしまう。




認知症は、85才以上で4人にひとりだそうだ。

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